僕たちは次の世代に何を残せるだろうか:新潟県・十日町で考えたこと

2017年7月17日月曜日

旅行記

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山の中を歩きながら写真撮影

「この十日町は、大地の芸術祭で知られていますが、
私たちが一番大事にしたいと思っているのは、一人一人の暮らしです」

7月15~16日にかけて、新潟県の南部、十日町市を訪問しました。
前回は一人で訪ねて、気ままに「大地の芸術祭」のアート作品を見て回ったのですが、今回はイベント参加です。

地域づくりメディアやイベントなどを行っている株式会社ココロマチと、十日町市役所が実施した「PHOTO LAB十日町~暮らしを伝える写真講座」。

十日町、特に大地の芸術祭のアート作品が多く置かれている松代地区において、人々の普段の生活の魅力を伝えるフォトブックをつくる企画です。
(あわよくば、地域おこし協力隊や移住してくれる人を募集しようという腹らしい。笑)

この7月と、来年1月の2回にわたり実施し、来年3月にフォトブックを上梓する予定といのこと。
第一回目となる今回は、十日町市外・市内の両方を合わせて、10数人が参加しました。

説明会場となったレストラン「渋い」。古民家を改装している。まつだい駅から歩いて10分くらい

地元の方々のホスピタリティー

今回は、「大地の芸術祭」のアート作品の展示場所ではなく、地元住民の方々が住んでいる地域や、そこから少し離れた山の中で撮影を行いました。

集落は、畑や田んぼと合わせて、多種多様な花が植えられ、夏のあでやかな香りが漂っていました。
あと、雪国らしい急斜な屋根の建物も多く、地域性を深く感じました。


集落の様子

集落では、花を植えている方が多く、とても色鮮やかでした


ただ、個人的には、一番驚いたのは、地元の方々のホスピタリティー。

今回は、おじいさん・おばあさんたちに、集落や山の中を案内してもらい、写真の被写体になってもらった上、さらにご飯までつくってもらいました。

(少しはお金が出ている、と思いたいのですが・・・)他所者にこんなに親切にしてくれるとは・・・。「自分が彼らの立場だったら、ここまでやれるだろうか」などと思いました。

夜の懇親会の時に、地元の方にそんな感想を伝えたところ、「芸術祭を続けているうちに、疲れないで適当に他所者と関わるノウハウを、皆が身に付けたんじゃないか」などと笑っていましたが。。

古民家で歓待して頂きました

撮影会が終わった16日のお昼は、地元の方々の手作り料理を頂きました


少し傾いたお地蔵様


苔むし、少し傾いているお地蔵様。この地域を長年見守ってきた姿に深く心打たれて、手を合わせました


今回連れて行ってもらった中で、特に印象的だった場所がありました。

この、松代という地域の中の中部にある山道に入り口に、道祖神のように複数のお地蔵様が並んでいました。

僕は、神社仏閣やお地蔵様の類が好きなので、嬉しかったのですが、すこし気になったのが、このお地蔵様たちが、少し傾いていること。

「雪で毎年倒れるんで、春になると起こすんだ」

案内をしてくれたおじいさんは、そのように説明してくれました。

この地域は、市街地でも2m、山間部では3~5mも雪が積もるということです。
当然、山の中に置かれているものが倒れたり、破損することも多くあります
(大地の芸術祭のアート作品も、冬の間は管理が大変なんだろうと、これを見ていて改めて思いました)

そうした厳しい自然環境の中で、このお地蔵様が残っているのは、地元の方々が代々、しっかりと手入れをしてきたからです。

この地蔵の一つには、「天保」という文字が刻まれているようで(正確には分からないのですが)江戸時代からずっと置かれてきた可能性もあるということですが、本当に何百年も、地域の人達が守ってきたものなのでしょう。

「自分が80歳になった時・・・」

ブナ林の上にある御堂。近くの木が倒れて屋根が破損した時、住民が協力して修復したとのこと

この地域は、中山間地で広い土地がないため、農業だけで食べれる人はほとんどいないそうです。

多くの人は出稼ぎや、特産品の絹織物に携わる仕事をしているそうですが、ただ、大量生産・大量消費の世の中、絹織物の売り上げも下がり、町では産業づくりに苦戦しているそうです。
(大地の芸術祭が評判になっていると言っても、アートフェスタなど所詮はそう儲かるものではないでしょう。。)

十日町は、移住者の多い地域として知られていますが、産業づくりという点では、まだまだ課題は多いようです。
特に、自分が暮らす分の稼ぎならなんとかなっても、子どもの学費などの問題が出てきた時、ぶつかるハードルが大きいかもしれません。


ただ、こんなことを考えていた時、ふと、前述のお地蔵様のことを思い出しました。

今回、案内してくれたおじいさんの中には、80歳前後の方もいらっしゃいました。
「自分たちは大学を出てないから」
と、照れながら語っていた方もいたのですが、こうした人たちの努力によってこの場所は守られてきたんだなあ、と感慨を覚えると同時に、

「あと50年たって、自分がこの方々と同じくらいの年齢になった時、
自分は下の世代に、何を残せるだろうか」

と、思いました。

都会で、より収入のよい仕事を得たとして、果たして自分は、下の世代を幸せにしたり、誇ったりできるようなものを残せるだろうか。

また、色んな問いを投げ掛けられた思いで、
東京への帰り道に着きました。

ブナ林

あちこちに切り株や、薪らしい木が積んでいました

ほお葉の使い方について説明して頂きました

雨が降ると、ブナの木の幹を伝う水の流れができます。近くで見ると神秘的です



夏で、山にはさまざまな実がなっていました

ブナ林で咲いていた花





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