5月末に会社を辞めてから、貯金を食いつぶす状態が続いた。
業務委託やフリーランスの仕事をしてきたが、家賃や携帯料金、税金、生活費を合わせると、毎月の収支が赤字になる。
収入が少なくなって身に染みたのは、税金類の重さだ。
住民税、国民年金、国民保険などを合わせると、それなりの額になる。
また、東京近郊なので、家賃もバカにならない。
(国民年金を払うのを辞めようかとも考えた。
そもそも、自分の世代が定年を迎えた時、日本に年金財源があるとは思いがたい。
ただ、個人的に、年金保険料は、前の世代への恩返しだと考えているので、一応払い続けている。
また、僕は結構病気もするので、国民保険も払っている)
もともと大して稼いでいたわけでもないので、貯金もそれほどない。
なので、預金残高が減り続けていく銀行通帳を見て、戦々恐々としていたわけである。
一応、いろいろと事情の変化があり、収入面がなんとかなりそうなので(まだひっくり返る可能性もあるが)、とりあえずほっとしているが、ここで、貯金食いつぶし生活の中で感じたことを記しておきたい。
貧しくなると、消費がファストになる
このところ、毎朝、玄米を炊き、朝と昼はそれで食べている(昼はおにぎりにして、外出先に持っていっている)。
そして夜は、外食かコンビニで済ましている。
外食で行くのはほとんどマックだ。
大体、100円のハンバーガーとチキンクリスプを食べている。
ビックマックや月見バーガーはもってのほかだ。
100円単位で節約をしていると、とにかく安いものばかりに目が行く。
これは、食事に限らずだ。
少し前に読んだ、ある社会起業家関係の記事で、
「よいサービスを続けるには、しっかりと対価を取るべき。価格競争に巻き込まれてはいけない」
といったことが書かれていた。
それには、自分自身の仕事を省みても、心から納得する。
ただ、いざ自分が貧乏な消費者の立場になってみると、「ごめんなさい」という思いがしながら、やはり1円でも安いものに目がいく。
フェアトレードで売っている商品を買いたい、などと思っても、なかなか難しいなあ、と思ってしまう。
しかも、「貧乏ヒマなし」とはよく言ったもので、今の自分には、金がない上、時間もない。
(次の仕事の関係で、車の教習所などにも通っていたため、疲労困憊だった)
(次の仕事の関係で、車の教習所などにも通っていたため、疲労困憊だった)
金がなくても、時間をかければ、工夫しだいでもっと使うお金を減らせると思う。
しかし、金も時間もないと、消費形態はファストにばかり走ることになる。
身近なものに目を凝らす
こんな状態なので、最近は休日もあまり遠出せず、お金を使わない過ごし方を考えるようになった。
(前は、新刊のマンガを買うのがストレス発散の方法だったが、ほとんどブックオフの100円コーナーで済ませるようになった)
それで行うようになったのが、身近なものを観察することである。
前に、マインドフルネス瞑想でお世話になっている方から、「都会に住んでいても、よく見ると、自然を感じることはできる」と言われた。
それで、ある時、普段通る道で、いつもより少しだけゆっくり歩いてみた。
すると、道端に生えている青々とした草、近所の家の軒先で咲いている花。そこに訪れる虫。
雨が降った後の木々の葉の上に浮かぶ水滴の美しさに気づいた。
夕焼け時に街を流れる風の気持ちよさ。
夕焼け時に街を流れる風の気持ちよさ。
鈴虫の鳴き声も、耳を澄ますと本当に多彩で、バッハを聴くよりワクワクしてしまった。
東京近郊の街でさえ、自分でも予想していなかったほど、「センス・オブ・ワンダー」はあふれている。
美術館に行かなくても、映画に行けなくても、世界の美しさを感じることができる。
そのことに、体の芯を突き通されるような、感動を覚えた。
(そして、これは30秒もあれば感じることができるものだ)
たしか、『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるさんのインタビュー記事で、「貧乏になると、感性が細やかになる」と語っていたように思う。
この発見は、この生活が気付かせてくれた宝物だと思う。
別に、貧乏を礼賛するつもりはない。
生活保護や、ワーキングプアの状況に陥っている方々は、僕よりずっと大変な思いをされていると思う。
(個人的に、東洋経済オンラインの連載「ボクらは貧困強制社会を生きている」を愛読しているが、ここに登場する方々の生活は、本当に大変だと思う)
貧困問題は政治的な解決も重要だと思う。
ただ、「ない」ことが気付かせてくれるものは、「ある」時よりも多いと思う。
イスラム教では断食をやるけれど、そうした行為は、(食べることだけでなく)日常のさまざまな側面であってもいいのかもしれない。
この貧しさのもたらす気づきを、どう生かすか。
何か答えが出ているわけではないのだが、自分とお金の関係を考える上で、今後も意識したいと思った。
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