感覚瞑想:ネイティブアメリカンの教えに触れた2年前の研修

2018年3月21日水曜日

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野草を摘んでお茶にする。たしかセイタカアワダチソウだったと思う

夜19時。渋谷のカフェ。

今日は、朝から雪が降り、午後から雨に変わった。

「山下達郎の「クリスマス・イブ」の逆パターンだから、待ち人が来るかも」と、心の中で冗談を言って、すこし楽しい気分になった。

その後、渋谷にある英会話カフェに行った際、「春分の日」が英語で「Vernal Equinox Day」と訳すことを知った。

普段、季節感のない生活をしているけれど、この言葉を聞いて、ふと心の中に、暖かい春の風を感じた気がした。

ネイティブアメリカンの教えへの関心

弓を使って火を起こす
先日、このブログで、松木正さんという方のインタビュー記事を紹介した。

「今流行りのマインドフルネスに物申す。29年間ネイティブアメリカンと共に生きてきたぼくが伝えたい、本当の「あるがままに生きる」とは?」

松木さんは、ネイティブアメリカンのもとで暮らした経験を生かして、現在、企業や教育関係者に対するリーダーシップ研修に取り組んでいる方だ。

実は、彼の記事を読んで、ついブログに引用したくなったのは、2年ほど前、別のところでネイティブアメリカンの教えに触れ、それがずっと頭の片隅に残っていたためだった。

前にこのブログで紹介した「地球のしごと大學」の関係で、2016年、千葉県で「里山サバイバル研修」という講座に参加したことがある。

「地球のしごと大學」についてはこちら:
地球のしごと大學
肉を食べることに関する整理のつかない感情:鶏の屠殺体験(1)


講座名のとおり、「弓を使って火を起こす」、「野草の使い方を学ぶ」といった野山でのサバイバル手法を学ぶ場だったが、この日の講師を務めていただいたのが、松木さん同様、ネイティブアメリカンのもとで学んだ方だった。

この日、僕たちに、サバイバルの基本的な心得や技術を教えてくれたのは、「WILD AND NATIVE」という団体の代表である川口拓さん。

彼の話の中にも、節々にネイティブアメリカンの哲学が顔をのぞかせた。

松木さんのインタビュー記事にしても、川口さんの講習についても、正直なところ、自分は今も十分に理解できているわけではない。

それにも関わらず、心に深く残るものがあり、今後も多分、折に触れて続けるだろうと思う。そのため、改めて、2年前の話をここにまとめておきたい。

サバイバルスキルへの憧れ 


夏のさかりを通り過ぎた11月の千葉の里山は、緑の木々や草の間に、枯れて色を失った草も入り混じり、どこか落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

空からは、冬の気配をしのばせた、おだやかな日射しが差し込めていた。

僕の中には、子どものときから「自然の中で、人工物に頼らず生きる」という在り方に、どこかロマンを感じる性癖があった。

また、2008年のリーマン・ショックを、2011年に東日本大震災を経験して以来、「いざとなったら、お金は役に立たないかもしれない」という危機感が、自分のうちに根強く残るようになった。

「何かがあっても、生きていけるスキルを身に付けておきたい」。そんないくつもの気持ちが折り重なり、この日、講習への参加を申し込んだのだった。

もっとも、「手で火を起こしたり、野草の使い方を知ることができるなんて、ちょっと面白そう」くらいの気分もあり、深い哲学を求めて参加したわけではなかった。

感覚瞑想

瞑想のほか、薪を集めたりした
そんな気分の中だったので、よけいに驚いたのだが、この講座では、一番はじめに、ネイティブアメリカンの瞑想方法である「感覚瞑想」を学んだ。

サバイバルというと「自然の中にあるリソースを「私」がどのように上手に活用するか」といった発想になりがちだ。

しかし、ネイティブ・アメリカンは、逆で、「自然や生命はみな、“波”を出している。その波に乗り、いかに彼らと共にうまく“ダンス”を踊るかが、生きる上で大切だ」と、むしろ「私」を自然に合わせようとする考えを持っているらしい。

この、自然のほうに自分を合わせていくうえで行うのが、「感覚瞑想」である。

現代人の生活は、「パソコンで文章を作成する」「資料を読む」「“選択と集中”で会社の業績向上」など、一点に集中して作業をしたり、ものごとを考えたりする機会が多い。

これとは逆に、自然の波にのるためには、「ワイド・アングル・ビジョン」が必要だという。

これは、「一か所に焦点を合わせず、広く世界を感じる」というものの見方ということ。

「薪になりそうな木はどこにあるのかといった、サバイバル上で必要なことは、広く自然を見なければ、見えてこないから」ということだ。

具体的に、感覚瞑想は、このような形で行った。

【感覚瞑想のやり方】
・目を、同時に左右に開いてみて、視覚が、左右でどこまで見えているのかを確かめる。
 その際、焦点を合わせず、ぼーと世界を見るようにする。
・風の動きを細かく感じる。(どの方向から、どのくらいの強さの、どんな匂いの風を吹いてくるか)
・前後左右から、どんな音が聞こえるかを感じる。
・現在見つめている風景を「食べて」みたら、どんな味がするかを想像してみる。
・自分の肌にいま、触れているものを感じてみる。


ここで重要なのは、何かに集中するのではなく、五感のすべてを開くこと。

そして、自分から「感じ取ろう」と向かっていくのではなく、ただ、自分の中に入ってくるものを受け取るという態度だ。

これをやった時の不思議な感覚は、しばらく残っていたが、正直なところ、自分の普段の生活の中でどのように使っていいのかが分からず、いつしか忘れてしまっていた。


しかし、松木さんのインタビュー記事には、「自分から感じ取ろうと向かうのではなく、ただ、自分の中に入ってくるものを受け取る」といったことが、新たな創造につながるカギであることが示されている。

これを読んでいて、新しい光が与えられたような気がしたので、今後、もう少し深掘りしてみたいものだと思っている。


5種類の薬草を覚えるより、1つの薬草の5つの効能を知ること


ほかにも、サバイバル技術に関して、この日教わったことで印象的だったのが2点あるので、併せて記しておきたい

一つは、野草の使い方に関して、「5種類の薬草を覚えるよりも、1つの薬草の5つの効用を覚えた方がいい」という考え方だ。

サバイバルの現場では、図鑑などを参照できる訳ではない。

沢山の種類の薬草について覚えるより、1つの薬草について深く知るほうが、効率的なのだ。

(個人的には、興味があちこちに目移りし、なかなか一つの専門分野を持つことができない職業生活を歩んできたので、そうした自分への戒めにも聞こえた)

もう1点、「野山で生き延びるうえで、食べ物と水、火、シェルターのどれを優先的に確保すべきか」ということも教わった。

これは、状況によって変化する部分はあるが、基本的に

1,シェルター
2,水、
3,火
4、食べ物

という順番になるという。

人間が生きるうえでは、実は一番大切なのは体温を保つことだ。そして、サバイバルな状況で一番の死因は、凍死だということだった。

前に、ある占い師に「体温を上げれば、あなたの抱えている悩みの多くの部分は解決する。だから体を温める食べ物をもっと摂りなさい」と言われたことがある。

また、中国でも、「体を冷やさないのが、健康に生きるコツ」という教えがあるらしい。

体温の大切さを、改めて肝に命じておきたいと思った。

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