「何を考えているか分からない人」に関する考察

2019年3月10日日曜日

t f B! P L

「あの人って、何を考えているか分かんないよね」

人の生活は、大半が他人との関係から成り立っています。その中で、友人や同僚に対して、このように感じることがあるかもしれません。

実は、自分は「キミって何考えているかワカンナイよね」とよく言われるタイプです(苦笑)。

その際たる例は、自分の親。

前の会社を辞めて、「将来、地方に移住したい」という話をした時。自分の考えの浅はかさを論破された挙げ句、

「●●は昔から、何を考えているか分からない子だった。頼むから、私たちに分かるように説明して!」となじられました。

他者とは、自分とは違う人間のこと。だから、分からなくて当然という気もします。

でも、現実生活の中では、ある人は「理解できる」気がして、ある人は「何考えているか分からない不気味なモンスター」と感じられることがある。この違いは一体なんなのか。

他人に「理解できない人」と思われがちな人間として、考察してみました。


「なぜそう考えるのか分からない人」VS「何を考えているか分からない人」

人間は、基本的に、自分を通して他人を理解しています。

つまり、「自分がこう感じるんだから、他人も同様に感じるに違いない」という前提の下、他人を理解している。

「この人のこと、よく分かる!」と感じられるのは、相手も、自分と似た思考回路の持ち主だから。他方で、「よく分からない人」とは、「自分と似ていない人」です。


その上で、「自分と似てなくて、理解するのが難しい他人」は、2つのパターンに分けられると思います。

第一に、「なんでそう考えるのか分からない人」

これは、「自分の意見を積極的に周りに伝えているけど、なんでそう考えるのかが良く分からない人」です。

例えば、以下のサイトを見た際に、「チロルチョコの包み紙を集める趣味」なるものが紹介されていました。

マニアックだと思った趣味30選

「これは、理解できないかも・・・」と感じたのですが、このように、自分のよく分からない趣味で楽しそうにしている人が、ここには含まれます。

(実際にこういう趣味をお持ちの方、事例に活用してすいません。よければ、ぜひ魅力について、教えて下さい笑)


第二が、今回のテーマである「何を考えているか分からない人」です。

これは、第一と比較すると、「そもそも、自分の意見をあまり表明しない人」ということになります。

なぜ、意見を表明しないのか。さらに、3つの場合を考えてみたいと思います。


1、ビジネス的観点からの心理戦

自分の意図を明確にせず、それとなく相手を誘導して、自分の利益の最大化を図る。

ビジネスや社内の人間関係、夫婦間などで、多くの人がやっていることでしょう。

「相手を誘導する」というと、邪悪な意図があるように思われるかもしれません。でも、実際は、これがあるから、世の中、丸く収まっている場合が多くある。

知人の女性と以前、「いかに夫をおだてて、家事をさせるか」という話をしたことがあります。

夫のモチベーションを高めるための彼女の技法(!)は、機知とユーモアに富んでいて、「こんな配慮があるから、この夫婦はうまく行っているんだな」と頷いたものです。

このように、本音を出さないようにしつつ、物事をうまく転がそうとするのは、様々な場面で行われていることです。

ただ、こうした利害が絡む場合じゃないのに、自分の意見をあまり表明せず、「何を考えているか分からない」と思われがちな人もいます。

これはいったい、どういう場合なのか。

2、ご本人も分かってないから

自分の意見を表明しないもう一つの理由として考えられるのは、「本人も、そもそも自分がどう感じているのか、分かっていない」場合です。

「自分」というのは、ある種の分裂を抱えています。

つまり、物事を主体的に考える「意識」と、感情や身体の反応といった「無意識」の領域に属するものに。

フランスの哲学者、サルトルに「対自存在」という言葉があります。これは、「自分を見つめる自分」といった意味ですが、こういう表現ができるのも、そもそも「自分」というのが、分裂を孕んだ存在だからです。


僕も、僕という人間がよく分かりません。

より正確に言えば、自分の無意識について、意識が理解できないのです。

例えば、「好みの異性のタイプ」について。

以前、友人と飲みながら、この話になったことがあります。

友人は、芸能人の例などを挙げながら、得々としゃべったのですが、自分は花粉症で鼻詰まりした人間のように、押し黙ってました。

というのは、心惹かれる女性は何人かいても、そこにどのような法則性があるのか、自分でもよく分からないから。

で、何を言ってもウソになる気がするから、何にも言えなくなる。


前述した、「地方に移住したい」という話にしても同じです。

地方活性化は現在、日本社会の大命題で、必要な取り組みだ。それに、環境問題や食糧問題を考えても、地方が元気なことは大切だ。

親にそんな話をしたのですが、「社会的ニーズがあるのは分かる。でも、なぜ、あなたがそれをやろうとしているのかが、伝わってこない」と反論されました。

この部分は、自分の中でも明確になっていなかった。自分が一体、「地方移住」の何に心惹かれているのかが分かっていなかった。

なので、親に論破された際に、言い返すことができませんでした。

3、ある種のコンプレックスがあるから

「自分の意見を表明しない」点について、もう一つの理由が考えられます。

それは、ある種のコンプレックスから、無意識のうちに他人に隠しごとをしているような態度を取ってしまう場合です。

例えば、自分は子どもの頃から環境問題に関心があり、電気をムダにしたり、無駄なゴミを出したりするのが嫌いでした。

ただ、そのせいで、「くそマジメな詰まらないヤツ」と周りに思われてきたコンプレックスがある。そんな自分を、心のどこかで恥じている。

そうした羞恥心から、他人に思わせぶりな態度をとってしまう。だから、「キミは秘密主義だ!」となじられたりするのかもしれません。

良い聞き役になること

ここまで考察してきて、ふっと思ったのは、「良い聞き役になりたい」ということです。

というのは、「自分の存在が何なのかさえ、解らず震えている」(by 尾崎豊)ような人、盗んだバイクで走り出した経験の有無に関わらず、それなりにいるのではないかと思います。

そういう人間に、「なんか隠しているでしょ!」「キミ、いつも本音を言わないじゃん!」と詰め寄ってもしょうがない。

だって、本人も、自分が何を考えているか分からずに困っているんだから。

そういう人に対して、じっと耳を傾けて、彼・彼女が自分を理解できるよう寄り添う。

ドイツの作家、ミヒャエル・エンデの小説『モモ』にも、すばらしい傾聴力によって、さまざまな人が、自分の気持ちを気付けるよう助ける主人公が登場します。

そうした形で、他者と関わることもできるのではないかと思うのです。


相変わらず、答えが出たような出てないような感じですが、このことについても、継続的に考えていきたいなーと思います。






QooQ