小さな命と向き合って

2020年2月11日火曜日

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2月初旬、東京に少し戻った。

そのとき、関東に住む友人を訪ねる機会があった。

友人は、先般子どもが生まれたばかり。育児に大わらわな所を、お邪魔させてもらったのだった。

赤ん坊は、まだ首がすわっていないおちびさん。

でも、お母さんの子守歌と一緒に「アーアー」と歌ったり、自分の手をじっと見つめ、こちらに微笑みかけたりする。

そんな姿を見て、スタジオジブリのアニメ『崖の上のポニョ』の歌詞を思い出した。


「ペータペタ ピョーンピョン
足っていいな かけちゃお!
ニーギニギ ブーンブン
おててはいいな つないじゃお!」


走れる足があること。

誰かとつなげる手があること。

歌える声があること。

その、奇跡。


この曲を初めて聴いたとき、生きることの初源的な喜びに触れた気がして、言い知れぬ感動を覚えた。


そして今回、赤ちゃんが泣いたり、オムツを変えてもらってキャッキャと喜ぶ顔を見ながら、

「こうやって、人は笑うことを覚えていくんだなあ」

神秘的な思いに、深く心を致したのだった。


その夜、成田空港そばのゲストハウスに泊まった。

「コロナウイルスのせいで、インバウンドビジネスは厳しい状況だね」

「どこかにうまい儲け話は転がってないかナア」

ご主人とそんな世間話をした後、部屋の電灯を切って、ベッドに横になった。


闇の中、うつつから夢の岸辺へ流れていく途中、ふと脳裏に

「あかりが笑うと、世界が笑うよ」

という、詩のような言葉がよぎった。

(「あかり」というのは、赤ん坊の名前)


ふだんは詩をつくる趣味なんてない。なぜそんな言葉が出てきたのか、自分でも不思議だった。

それから起き上がり、読書灯を付けた。

そして、とめどなく浮かびあがる言葉たちを、改めてまとめてみた。


小さな命に

あかりがわらうと 世界が笑うよ
おかあさんを いっぱい困らせて
おかあさんを いっぱい笑わせて

小さなおててを ブンブンふって
小さなあんよを グルグルまわして
生まれてうれしいって いっている

ながい病気の後、
はじめて太陽の下を歩くように
世界はきっと、奇跡でありふれているんだね

あかり 天からの贈りもの
あなたの夢に 静かな雪が注ぎますように
おかあさんの心に 小さな灯りがともりますように



翌朝は、きれいに晴れ上がった。

高松行の飛行機まで少し時間があったので、成田山新勝寺に立ち寄ることにした。


まだ8時前だったが、境内にはすでに参拝客の姿がちらほら見られた。

本殿でお参りした後、社務所に立ち寄って、絵馬をかけさせてもらった。

「この星にやってきたばかりの、あの小さな命が、幸せでありますように」

という願いを込めながら。


朝の光の中、絵馬掛けの向いに、三重塔が静かにたたずんでいた。




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