11月下旬なので、夜は氷点下になる。
もともと、自分は滅多にキャンプをすることはないが、そうした寒い場所でテント泊をするのは、当然、生まれて初めてだった。
大型テントで鍋
東京をバスで出発したのは8時頃。途中、雪が降りしきる越後湯沢を通り抜け、キャンプ場に昼過ぎに到着した。
幸いなことに、僕たちが泊まったキャンプ場は、曇天ではあったが、ほんの少し雪が残っていた程度で、地面もぬかるんでいなかった。また、風もほとんどなかった
昼間は仕事関係の研修があったので、本格的にキャンプの準備を始めたのは、17時前くらい。
まず、3〜4個のテントをつなげたくらいの横長の大型テントの中で、皆で鍋料理をつくった。
鍋の熱に加え、この大型テント内では弱火のストーブが使えることもあり、かなり暖かかった。
食後、19時前ごろにバスに乗って近隣の温泉へ。
ここに1時間ほど風呂でくつろいだ後、再びキャンプ場に戻ってきたのは21時頃。
バスの中が暖かかったせいか、降りた時は、それほど寒くは感じなかった。
湯冷めする心配をしていたが、意外と平気だった。
焚き火と星空
それから、焚き火を行った。
(着火剤をバーナーでつける式の簡易なもの。燃やす木には、杉と楢をつかった。なんでも、杉は着火しやすく、楢は火の保ちがよいということだ)
焚き火に対して、寒そうな(背中がスースーしそうな)イメージがあったが、やってみると意外なほど暖かかった。
ここで、他の参加者と、過去に行った外国の話をしたり、マシュマロやチーズを焼いたりした。
夜がふけるにしたがって、星が冴えてきた。
普段、ある程度の都市部に住んでいると、冬の星といってもオリオン座くらいしか見る機会はない。
ところが、焚き火と、近くのトイレに設置された白熱灯くらいしか明かりがないこのキャンプ場では、本当に、満点の星空が見えるのだ。
自分の真上の空だけであく、地平線に近いあたりにまで、星が広がっている。
光が強いもの弱いものまで、さまざまな星が見える。
星空とは、水墨画のように濃淡があるものなのだと、初めて知った。
夜が深まり、寒くなってくるにしたがって、星空は、ますます冴え冴えと見えてくる。
下では焚き火が音もなく燃え、上は静かに佇む星空。
今が21世紀であることも忘れてしまいそうな、別世界にいるような感覚だった。
アインシュタインが、宇宙を見て、地球と宇宙の時間の流れが異なること(相対性理論)を発見したということが、少し分かる気がした。
厳しくなる寒さ
そうこうしているうちに、何か温かいものを食べたり飲んだりしたくなった。
そこで、大型テントに戻りホットワインなどを飲んた。
(普段はビール一杯でほろ酔いになるのに、寒いせいで、ついつい飲みすぎてしまった)
そうやって身体を温めていたのだが、22時半くらいになる頃から、寒さが厳しくなってきた。
ちなみに、この日の自分の服装だが、上は、ユニクロのハイネックの長袖シャツにセーター、それからダウンジャケットである。
下は、ヒートテックのタイツに厚手のズボン。靴は、前に冬の北海道に旅行する際に買った、雪用のものだ。
昼間はこれで全く問題なかった。むしろ、少し暑かったくらいだが、夜になると、だめだった。
特にたまらないのが、手だ。もともと僕は手が冷え性だが、この日はあまりにかじがんでしまって、ものを握るのがきつかった。
手袋をしていても、上半身の寒さが伝わってきて、かじかんでいる状態が治らなかった。
数年前に、12月末に夜通しで東京から横浜の方まで歩いたことがある。
その時は、本当は湘南の海まで歩きたかったのだが、疲れるより先に、寒すぎて足が動かなくなりリタイアすることになった(保土ヶ谷の先くらいまで行った)。
その時も、昼間はあまり寒くなかったのだが、冬の夜の寒さは、昼間と比較にならないと思い知らされたものだ。
23時をすぎると、ますます寒さが厳しくなった。
テント内で、仕事関係の議論が続いていたが、寒くて仕方なかったので、一足先に退散させてもらい、自分の寝る用のテントに行った。
テントといっても、当然、中が暖かいわけではない。
雨と風が避けられる程度のものだ。
寒さにガタガタしながら、キャンプ場からレンタルした寝袋を広げた。
マイナス8度まで大丈夫という非常に良い寝袋で、寒ささえなければ、とても快適だったろうと思える。
はじめはウトウトすることができたのだが、1時間くらいして、外が多少騒がしいのと寒さで目が覚めてしまった。
この時の寒さは微妙なもので、「寒くて凍え死ぬ」といった危機感を抱かせるものではないが、「このまま寝ると、風邪を引くかも」くらいの不安は感じるものだった。
そんな感じから、不安で寝付けず、半覚半寝といったような、ウトウトした状態が続いた。
(昔、テレビCMで見た、雪山で遭難した男二人組が「寝たらアカンで〜。寝たら死ぬで」とやっているシーンが、脳内を駆け巡っていた)
もっとも、この時に良かったのは、他の参加者からホッカイロをもらったことである。
背中に一枚、貼るホッカイロを着けていたのだが、これがあるのとないのでは、まるで違った。
(なお、他の参加者にはぐっすり眠れた人もいたようなので、人によってや、防寒対策で、寒さの感覚はだいぶ異なるようだ)
こんな形だったが、朝7時頃に起きた時には、意外と疲れが取れていた。
(身にしむ寒さだったので、起き上がるのは嫌だったが、起きないでこのままの状態でいるのも辛い、といった、微妙な状態だった)
テントの外に出ると、一面に霜が降りていた。
凍るような寒さに身震いしながら、トイレに行った。
少し外を散策してから、大型テントでミルクを沸かしたりして、朝食を食べた。
食器を洗いに行ったのだが、幸い、このキャンプ場では温かいお湯が出る。
しばらくお湯に手を浸しながら、「天国、天国」などとホクホク顔になった。
(昔の日本の話を読んでいると、寒い冬の朝に食器洗いをして、手があかぎれを起こす、という描写がよく出てくる。
お湯が出なかった時代の冬の食器洗いや洗濯は、本当に大変だったのだろうとつくづく実感する)
そうこうしているうちに、10時からまた研修を行い、キャンプは終了となった。
一般的な感想だと思うが、改めて、温かい家で寝ることができるのは、ありがたいもんだと思った。
もっとも、そんな思いをさせてくれたことも含めて、冬場のキャンプ、またやってみたいと思っている。
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